ホルン?クラリネット?知られざるバセットホルンのディープな世界!

こんにちは、H. Châteauです。みなさん、バセットホルンという楽器を知っていますか?名前だけ聞くと、「ホルン」とついているので金管楽器のホルンの仲間かと思っちゃいますが、実はクラリネットの仲間なんです。

このバセットホルンは、吹奏楽主体の人だけでなくオーケストラのアマチュアクラリネット奏者でもほとんど見たことがなく、場合によっては名前すら聞いたことがないかもしれません。何故なら、クラシックでもバセットホルンが必要な曲は極めて少ないからです。さらにプロを含めても大半のクラリネット奏者は所有していないため、見る機会も吹く機会も聴く機会もほとんどないからです。このため、日本ではマニアックな楽器、マイナー楽器となっています。今日は、そんな知られざるバセットホルンのディープな世界を調べてみたのでお伝えします!

動画数が多く読み込みに時間がかかります。ご注意ください。
バセットホルンが使われている曲の動画は2ページ目にあります。

1.概要

バセットホルンはクラリネットの仲間であり、ソプラノクラリネット(Bbクラリネット・Aクラリネット等)とバスクラリネットの間の音域に位置するクラリネットです。現在はアルトクラリネットとほぼ同じ音域で似た楽器ですが、楽器としての成り立ちは異なっており、バセットホルンの方が歴史上先に出来ています。アルトクラリネットと比べるとキーの数と調性が異なっており、実音はわずかにバセットホルンの方が低くなります。bassetとはフランス語で「低い」「低位置の」という意味で、hornは 角笛という意味です。各国での名称表記は下になります。どの国でも意味合いとしては「低い角笛」になります。

日本語 バセットホルン
英語 Basset horn
ドイツ語 Bassetthorn
フランス語 Cor de basset
イタリア語 Corno di bassetto

バセットホルンの歴史は古く、モーツァルトが幼少期の1760年頃にはすでに作成されており、一部の作曲家には人気のあった楽器でした。昔のバセットホルンは現在の楽器と材質や形状が異なっており、音色もかなり違います。ただ、今のクラリネットと昔のクラリネットでも材質や構造・音色が変わっているように、バセットホルンだけ昔と変わっているというわけではありません。しかし、昔のバセットホルンは楽器としては変な形をしているので、昔と大きく変わったように思えます。詳しくは「2.バセットホルンの歴史」で説明します。

現在のバセットホルンはクラリネットと同じグラナディラ(アフリカンブラックウッド)を使っています。形状もアルトクラリネットとほとんど同じため、アルトクラリネットとの違いが判らず混乱することもあります。また、名前が似ているバセットクラリネットや、バセットホルンの別名にもなっているテナークラリネットがあることに加え、バセットホルンはクラリネット属の中で唯一「クラリネット」の名前が付かないので、それも混乱に拍車をかけています。

バセットホルンのための曲はモーツァルトがかなり残していますが、そのほかにもメンデルゾーンやリヒャルト・シュトラウスなど有名な作曲家も数曲残しています。

2.バセットホルンの歴史

バセットホルンは、17世紀中後半に現れた楽器です。1760年代の初期の楽器に「ANT et MICH MAYRHOFER INVEN. & ELABOR. PASSAVII」と銘があります。この楽器はミュンヘンに近い(といっても電車で2時間)ドイツ南東部の国境付近都市パッサウで、アントン・マイヤーホーファー(Anton Mayrhofer, 1706-74)とミヒャエル・マイヤーホーファー(Michael Mayrhofer, 1707-78)兄弟が作成したといわれています。

そして、バセットホルンの名手であったアントン・シュタードラー(Anton Stadler, 1753-1812)とヨハン・シュタードラー(Johann Stadler,  1755-1804)の兄弟がモーツァルトやベートーヴェンに会ったことで、彼らのバセットホルンの名作曲に繋がっていったと考えられています。バセットホルンは18世紀の古楽器と現代の楽器はよく知られていますが、途中の形はあまり知られていません。コチラのサイトでいくつか見れますが、1840年以降は現在に近い形になっています。

現在では、1843年にフランスのビュッフェ(L. A. Buffet, -1885)とクローゼ(H. E. Klose, 1808-1880)によってベーム式フルートのキー機構を応用した「ベーム式クラリネット」が開発されたことから、フランス系メーカー(ビュッフェ・クランポン、ルブラン、セルマー等)のバセットホルンベーム式のキー機構を採用しています。一方、ドイツ・オーストリア系のメーカー(ヴァーリッツァー、シュヴェンク&セゲルケ、ハンマーシュミット等)は、1812年にI.ミュラーが開発した13キーのクラリネットを元に1900年頃にオスカール・エーラーによって開発されたエーラ―式を採用しています。

3.昔のバセットホルンと今のバセットホルンの違い

昔のバセットホルンと現在のバセットホルンは形状や材質が異なっており、音色も変わっています。

昔のバセットホルン

昔のバセットホルン ハンブルグ美術工芸博物館所蔵 Wikipediaより

材質は、当時のクラリネットやオーボエと同様におそらく黄楊(ツゲ;European boxwood、Buxus sempervirens)か楓(カエデ;maple、詳細な種類は不明)でできていた思います。

形状は今の楽器にはない特殊な形状で、管がつなぎ目で折れ曲がり、楽器の下部には四角いボックスがついており、さらにボックスから繋がった金属製のベルがあります。これにより普通のクラリネットよりも管を延長させることができたため、音域が広くなっており当時のクラリネットにしては高音域でやや金属的な音も混じります。復刻された楽器の音色を聴いてみると、現在のクラリネットのクリアで丸い音よりも倍音が混ざったハーモニカ風の音になっているように思います。管体も現在より薄く、素朴な響きのある音です。

管の内径はソプラノクラリネット(Bb管やA管)とほぼ変わらなかったようです。


※↑復刻楽器です。

現在のバセットホルン

ビュッフェ・クランポン製バセットホルン(細管)

現在のバセットホルンはクラリネットやオーボエと同じくグラナディラ(アフリカンブラックウッド)で作られており、楽器の形状も真っ直ぐで、一番下に金属製のベルが付いています。ほぼアルトクラリネットと同じ形です。アルトクラリネットを見たことがない方はバスクラリネットを思い浮かべてください。ネックの形状や楽器の太さが違いますが、見た目は似ています。音域は昔のバセットホルンと同じです。音色は現在のクラリネットに近く、クリアで丸く、クラリネットよりもわずかに暗めの音がします。高音域も昔のバセットホルンのような倍音が含まれた音ではありません。

管の内径は基本的にソプラノクラリネットと同等かそれより広いくらいですが、メーカーの設計思想により各メーカーで太さが変わっています。

4.アルトクラリネットとの違い

アルトクラリネット Wikipediaより

アルトクラリネットとの違いですが、形状は写真からもわかるように現在のバセットホルンとほぼ変わりません。材質もグラナディラで一緒です。違いはリード、マウスピース、キーの数と調性、楽器の内径です(以下の表のとおり)。バセットホルンの方がキーが多くアルトクラリネットよりも半音低い音が出ますが、音量はアルトクラリネットの方が大きく、響きもあります。なぜこんなにも似ている楽器があるのかというと、楽器の成り立ちは違うものの最終的に同じメーカーが作ることになったからです。

    バセットホルン アルトクラリネット
リード ソプラノと同じ アルトクラリネット用
マウスピース ソプラノと同じ アルトクラリネット用
キー  Low C(実音 F)  Low Es(実音Ges)
システム ベーム式(独・墺はエーラー式) ベーム式
調性 F管(まれにG管) Es管
内径 約15.5~18mm 約17~18mm

アルトクラリネットの歴史

アルトクラリネットは、エストニア(当時はロシア帝国のバルト・ドイツ人都市)のクラリネット&バセットホルン奏者のイワン・ミュラーIwan Müller, 1786-1854)と、ドイツの楽器職人ハインリッヒ・グレンサーHeinrich Grenser, 1764-1813)が開発したといわれています。H. グレンサーは初期のバスクラリネットを作った一人でもあり、その他にも多くの木管楽器を製作していました。その後、サックスを開発したベルギーのアドルフ・サックス(Adolphe Sax, 1814-94)が改良していきました。また、1810年頃にアメリカ・コネチカット州の楽器職人ジョージ・カトリン(George Catlin, 1778-1852)がファゴット型バスクラリネットを作成しており、1820年頃ににEs管の「アルトクラリオン」というファゴット型バスクラリネットと同型の楽器を作っているため、そちらも現在のアルトクラリネットの原型の一つとして考えられています。

楽器の開発は、現在でも特許や研究開発で誰が最初の開発者か揉めることがあるのと同様に、ミュラー&グレンサーとカトリンのどちらが最初の開発者か特定するのは難しいためはっきりとはしていません。楽器史の研究者の間でも意見が分かれるところでしょう。

クラシック音楽ではアルトクラリネットのために書かれた曲が皆無である一方、軍楽隊や吹奏楽で用いられる曲にアルトクラリネットが使われているため、おそらく軍楽隊や吹奏楽が多かったアメリカ等で音量を大きくするための内径の拡大や調の変更等の発達をしていったと思われます。一方のドイツでは、メンデルスゾーンやリヒャルト・シュトラウスといった作曲家が度々バセットホルンを使った曲を作ったため、バセットホルンはドイツでその地位を築いたのだと思います。

1843年のビュッフェとクローゼの「ベーム式クラリネット」の開発に倣い、現在のアルトクラリネットベーム式のキー機構を採用することになりました。ちなみに、ドイツ式のアルトクラリネットは存在を聞いたことがありません

まとめ

バセットホルンの方が歴史上最初にありましたが、途中で音量の拡大等のため内径やキーの変更等によりアルトクラリネットも開発され、キーシステムや材質の発展と共に、グラナディラでクラリネットを製作しているルブランやビュッフェ・クランポンなどの世界的メーカーがバセットホルンもアルトクラリネットも作るようになったので、同じような形に収斂しました。ただ、歴史の経緯から、現在でもバセットホルンはクラシックで、アルトクラリネットは軍楽隊や吹奏楽で使われるよう住み分けが続いているのでしょう。吹奏楽の中低音クラリネットアルトクラリネットクラシックの中低音クラリネットバセットホルンという認識でよいと思います。

ちなみに、さらにややこしいことにアルトクラリネットのマウスピースとリードを使い内径もアルトクラリネットと同じバセットホルンも存在します。これが太管バセットホルン(F管アルトクラリネット)と呼ばれるものです。バセットホルンの太さについては「7.現在のバセットホルンの太さ3タイプ」で解説します。

Wikipedia(日本語) / クラリネット
Wikipedia(英語) / Alto clarinet

5.バセットクラリネットとの違い

バセットホルンに似た名前の楽器に「バセットクラリネット」というものがあります。こちらもモーツァルトが活躍していた時代に作られた楽器で、1788年にウィーン(またはスロバキアのブラチスラバ)の楽器職人テオドール・ロッツTheodor Lotz)によって発明され、バセットホルンの名手アントン・シュタードラーによって改良されました。アントン・シュタードラーはこの楽器を使い、1789年にモーツァルトのクラリネット五重奏K.581を初演し、1791年にクラリネット協奏曲K.622を初演したといわれています。

昔のバセットクラリネット

18世紀のバセットクラリネット ハンブルク美術工芸博物館所蔵 Wikipediaより

バセットホルンとの大きな違いは形状と調性です。昔のバセットクラリネットはバセットホルン同様管体が途中で折れ曲がっていますが、バセットホルンのような金属ベルとボックスがなく、代わりに丸い木製のベルがついています。調性はバセットホルンがF管またはG管なのに対し、バセットクラリネットは一般的にA管(まれにBb管、C管あり)になっています。音色もバセットホルンのような金属的な響きがなく、昔のクラリネットのような丸い音がするため、まさにクラリネットの音域を拡張した「バセット(低い)クラリネット」になっています。

現在のバセットクラリネット

Wikipediaより

現在のバセットクラリネットは、材質はやはりグラナディラ(アフリカンブラックウッド)で、楽器の形状も真っ直ぐです。調性はA管のものがほとんどで、音色もA管のものと相違ありません。A管を延長した、「低音のキーが多いA管クラリネット」という扱いです。実際にこの楽器を使うのは、モーツァルトのクラリネット五重奏やクラリネット協奏曲くらいではないでしょうか。

Wikipedia(英語) / Basset clarinet
Wikipedia(ドイツ語) / BassettKlarinette

6.テナークラリネットとの違い

現在、バセットホルンをテナークラリネットと呼ぶこともあるようですが、youtubeや海外のオークションサイトを見てみると直管のF管クラリネットをテナークラリネットと呼んでいることもあり、「テナークラリネット」の定義がいまいちハッキリしていません。バセットホルンの音域はアルトクラリネットとほとんど変わらないので、あえてバセットホルンを「テナー」クラリネットと呼ばなくてもよいと思います。

海外でも議論を呼んでいるこの動画のテナークラリネットは、本人によると世界で唯一の「ストレート・アルトクラリネット」または「テナークラリネット」と呼ばれるものであり、調もバレルで自在に変えるようです。クラリネット制作者Tayfun Demirok氏のもと、トルコのメーカー「Hubb」で制作されたということです(英語の掲示板より)。テナークラリネットの一種といえばいいのでしょうか。

7.現在のバセットホルンの太さ3タイプ

現在のバセットホルンには、昔のバセットホルンの内径で現代風に再現した細管タイプと、現在のアルトクラリネットの内径の太管タイプがあるといわれていますが、実はその中間にあたる中管タイプがあります。

細管タイプ

  • マウスピースはソプラノクラリネット用(Bb管、A管と同じ)を使用
  • リードもソプラノクラリネット用
  • 管の内径が細めで(ソプラノクラリネットよりはやや太い)、音色はソプラノクラリネットに近い
  • 内径は15.5〜16.0mm

中管タイプ

  • マウスピースは中管専用またはアルトクラリネット用を使用
  • リードはソプラノクラリネット用またはアルトクラリネット用
  • 内径が17.0mm前後

太管タイプ

  • マウスピースはアルトクラリネット用を使用
  • リードもアルトクラリネット用
  • 管の内径が太く、音色はアルトクラリネット
  • 内径は約18mm
  • いわゆる「F管アルトクラリネット」

どのタイプも同じ音域なので、演奏可能な曲に違いはないですが、音色が明らかに異なるため、もし購入する場合は自分が演奏する曲や求める雰囲気、好みを考慮したほうがいいかもしれません。

例えば、モーツァルトの「グランパルティータ」を太管タイプで演奏する場合、音量や他の楽器との音色のバランスはかなり考慮する必要があるでしょう。一方、クラリネット属の楽器がたくさん使われるような曲にバセットホルンが使われている場合、音色がソプラノクラリネットに近い細管タイプでは音色や音量の違いが出せないかもしれません。曲によってバセットホルンに求められる音色が違うため、使う管を変えたり、吹き方を変えて対応する必要があるでしょう。

8.現在バセットホルンを作っているメーカー

細管タイプ

セルマー・パリ(フランス、フレンチシステム)
Henri Selmer Paris

ビュッフェ・クランポン(フランス、フレンチシステム)
Buffet Crampon
※細管だったのは1990年頃までです。

中管タイプ

ビュッフェ・クランポン(フランス、フレンチシステム)
Buffet Crampon
※マウスピースはアルトクラリネット用で内径が中管なので厳密には「複合タイプ」です。

オットマール・ハンマーシュミット(オーストリア、エーラーシステム)
Otmar Hammerschmidt

太管タイプ

ルブラン(フランス、フレンチシステム)
Conn-Selmer LeBlanc
※現在はメーカーが製造していない可能性があります。

内径不明

シュヴェンク&セゲルケ(ドイツ、両システム)
SCHWENK&SEGGELKE

ヴァーリッツァー(ドイツ、両システム)
Wurlitzer

9.バセットホルン・アーティスト

バセットホルンを専門にしているアーティストは少ないですが、いくつかありましたのでご紹介します。

ロッツ・トリオ(Lots Trio)

おそらくスロバキアのバセットホルン・トリオである「ロッツ・トリオ(Lots Trio)」。彼らの最も大きな特徴は、バセットクラリネットを初めて作成したウィーン(またはスロバキアのブラチスラバ)の楽器職人テオドール・ロッツが作成したバセットホルンのレプリカで演奏することです。モーツァルトの作品を取り上げることが多いですが、その他の作曲家もレパートリーになっています。昔のバセットホルンのレプリカでの演奏は、音色や響きがとても豊かです。

メンバーはロバート・セベスタ(Robert Šebesta)、ロナルド・セベスタ(Ronald Šebesta)、シルベスタ・パーシラー(Sylvester Perschler)の3名です。

Lots Trio
Youtube Channel / Lots Trio

プラハ・トリオ(The Prague Trio of Basset-horns)

チェコのプラハ交響楽団のメンバー3人で結成された「プラハ・トリオ(The Prague Trio of Basset-horns)」。彼らのホームページを見る限りでは、現代の楽器で演奏しているようです。Youtubeに音源はありませんが、彼らのホームページからダウンロードできます。メンバーはPetr Sinkule、Zdeněk Tesar、Miroslav Plechatyの3名ですが、もうみなさん60~70歳くらいなので活動していないかもしれません。

The Prague Trio of Basset-horns

モスクワ・バセットホルン・トリオ(Moscow Basset-horn trio)

Youtubeに載っていたバセットホルン3本のトリオ動画です。全員古楽器またはレプリカを使用しています。ホームページが見当たらなかったので団体か否かの詳細も不明ですが、メンバーはKyrill Rybakov、Valentin Azarenkov、Alexander Aksenovの3名のようです。

10.バセットホルンを用いた作曲家

ヨーゼフ・ランゲ作 W. A. モーツァルト – Wikipediaより

バセットホルンを好んで用いた作曲家の筆頭は、オーストリアの作曲家W. A. モーツァルトでしょう。クラリネットやバセットホルンが登場した時代の作曲家であり、アントン・シュタードラー等の名手にも出会えたことが彼の膨大なバセットホルンの著作にもつながったと思われます。バセットホルンを心から愛した唯一無二の作曲家といっても過言ではありません。モーツァルトのバセットホルンの代表作は、オペラ「魔笛、「レクイエム」、「フリーメイソンのための葬送音楽」、「セレナーデ K.361(グラン・パルティータ)」等でしょうか。オペラから室内楽まで様々な楽曲でバセットホルンを用いています。

モーツァルトの僅かに前の作曲家に、チェコ系ドイツの作曲家カール・シュターミッツがいます。彼はマンハイム楽派の作曲家で、おびただしい数の交響曲や協奏曲や室内楽を残していますが、中でもクラリネットの作品が多く、そのうちの1つに「バセットホルン協奏曲」があります。数少ないバセットホルンの協奏曲作品で最も古いかもしれません。なお、モーツァルトと同時代のイタリアの作曲家アレッサンドロ・ロラ「バセットホルン協奏曲」を残しています。

L. v. ベートーヴェンも自作にバセットホルンを用いていますが、確認した限りではバレエ音楽「プロメテウスの創造物」だけで、しかもクラリネットの持ち替えでした。コンサート形式のクラシック音楽が貴族の宮廷からオペラの劇場に移っていった時代だったのもあり、音量が比較的小さいバセットホルンの有用性は下がっていきました。交響曲でも出番も作れなかったセットホルンは、オーケストラ楽器としての市民権を得るには至らなかったと思われます。もし、ベートーヴェンが一度でも交響曲にバセットホルンを用いていたら、その後の使われ方も変わっていったかもしれません。

F.メンデルスゾーンも室内楽曲で「2つのコンツェルトシュテュック」を作曲していますが、これはクラリネット奏者からの依頼に答えたものであり、バセットホルンが好きで作ったわけではありませんでした。彼のそれ以外の作品にはバセットホルンは使われていません。

1900年頃のリヒャルト・シュトラウスの写真(複製) – Wikipediaより

ドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウスの作品で、バセットホルンがモーツァルト以来オペラに復活します。バセットホルンはオペラ「エレクトラ」オペラ「ばらの騎士」オペラ「カプリッチョ」で使われましたが、オペラにおいては各木管楽器群の特殊楽器の一つとしての認識であり、例えば「エレクトラ」はオーボエ属ではヘッケルフォン、クラリネット属ではエスクラ・バスクラと同様特殊楽器として扱われており、「ばらの騎士」でもバスクラリネットの持ち替えの扱いだったりしており、モーツァルトのように重用したわけではなさそうでした。「カプリッチョ」は単独のようですが、IMSLPにパート譜がないため重用されているかは調べきれませんでした。

モーツァルトを敬愛していたリヒャルト・シュトラウスは、若い頃モーツァルトの13管楽器のための室内楽の大作「セレナーデ K.361(グラン・パルティータ)」の編成を参考にして「13管楽器のためのセレナーデ」を作曲したほどですが、グラン・パルティータでは2本バセットホルンが使われているにも関わらず彼のその曲ではバセットホルンを使用しませんでした。しかし彼の晩年の作品、木管16重奏曲「ソナチネ第1番, TrV 288」「ソナチネ第2番, TrV 291」でついに室内楽としてバセットホルンが1本使い、ここに室内楽バセットホルンも復活を果たしました。

その他、F. シュレーカーオペラ「烙印を押された人々」オペラ「狂える焔 Irrelohe」に、H. ブライアン が交響曲第一番「ザ・ゴシック」に、K. シュトックハウゼン「 光の月曜日」にバセットホルンを使用しています。

Youtube音源、あとがき、参考サイトは、次ページにまとめてあります。