レ・ヴァン・フランセのメンバーはどのメーカーの楽器を使っているの?

2年に1回来日している木管アンサンブル界のスーパースター、レ・ヴァン・フランセ。アンサンブルの表現力や技術はもちろん、それぞれがソリストやオーケストラ、大学教員や指揮者として今でも第一線で大活躍しています。ところで彼らのパートナーたる楽器はどこのメーカーのものなのか気になったことはありませんか?気になったので2018年時点の情報を調べてみました!

Fl / エマニュエル・パユ(Emmanuel Pahud)

フルートの貴公子と言われ、国内外で絶大な人気と実力を誇るエマニュエル・パユ氏。1970年1月27日、スイス・ジュネーブの出身です。ベルリンフィルでもまだまだ現役で活躍しています。彼が使っている楽器はこれでした。

「ヘインズフルート 14Kピンレスモデル」

アメリカのメーカー「ヘインズフルート」の、材質が14金(重量の24分の14が純金。24金は99.99%純金)の楽器でした。ピンレスモデルとは、離れていて遠隔操作する必要があるキーを「ノックピン」というピンを芯金に打って遠隔操作を可能にしていますが、強度の低下や芯金のサビの原因にもなっていたためそのピンを取り除き、代わりにブリッジ機構で遠隔操作を可能にしたシステム、のようです(ご参考:吹奏楽の風)。

価格はドルチェ楽器の価格表を見ると総14金モデルで定価は620万円前後。うーん、さすが世界第一級奏者!

おや?パユってヘインズだったっけ?とお思いのファンの皆さん。彼のオフィシャルサイトCareer, FAQ)を見ると次のように書いてあります。

(意訳)最初の楽器はヤマハの銀メッキで、その後両親からムラマツのセミハンドメイド、フルハンドメイドの2つを購入してもらいました。その後、パユはコンクールの賞金でブランネンの14Kを購入しました。ブランネンを選んだのは、アルバート・クーパーが設計した当時最新の「クーパー・スケール」を備えていたからです。その後に、ダナ・シェリダンの頭部管を購入して交換しました。この頭部管シェリダン・ブランネンボディのフルートは1989~2012の間使っていました。 

そして現在ではヘインズフルートの14Kピンレスモデルを使用している、ということです。なお、上のWikipediaに掲載されていた写真は2009年頃のものですので、持っている楽器はシェリダン・ブランネンのものと思われます。

パユ28歳の動画(シェリダン・ブランネンの楽器)

エマニュエル・パユ オフィシャルサイト

Ob / フランソワ・ルルー(François Leleux)

francoisleleux.com galleryのPress Packより

ヨーロッパ室内管弦楽団のソリストを務め、ミュンヘン音楽・演劇大学の教授として後進の指導にもあたっているフランソワ・ルルー氏。1971年7月30日、フランス・クロワの出身です。世界的オーボイストとして日本でも大人気です。最近では指揮者としても活動しています。彼が使っている楽器はこちら。

「マリゴ 特注品」

フランスの世界的オーボエメーカー「マリゴ」の特注品ではないか(ご参考:オーボエ奏者西入氏のブログnever too lateより引用)とのことでした。ルルーにもオフィシャルサイトはありますが、パユのように使用楽器について詳しくは書かれていませんでした。

基本的に看板プレイヤーを標榜しないマリゴ社ですが、唯一専属契約を交わしたのがフランソワ・ルルーであり、同社の新型のオーボエのアドバイザーも兼任しているとのことです(Wikipediaより)。

金額については特注品だと記載はないと思いますが、野中貿易株式会社(マリゴの親会社)ラインナップでは最高機種で200万円くらいでしたので特注品だとそれ以上はするでしょう。

ルルー氏少し若かりし動画(頭頂部にまだ髪が)(←失礼。。)

フランソワ・ルルー オフィシャルサイト

Cl / ポール・メイエ(Paul Mayer)

Web上に自由に使える写真がなかったため2016年チラシより。右から2番目

室内楽やオーケストラソリストだけでなく指揮者としても活躍している名クラリネット奏者、ポール・メイエ氏。1965年3月5日、フランス・ミュルーズの出身です。彼が使っている楽器はコレ。

「ビュッフェ・クランポン ディヴィンヌモデル」

Wikipediaによると、日本で有名なクラリネットメーカーの3本の指に入りオーケストラ奏者ならだいたい使ったことあるフランスのメーカー「ビュッフェ・クランポン」のディヴィンヌ(Divine)というモデルを使っているようです。実際、クランポンのディヴィンヌモデルのページには彼の名前がありました。

ビュッフェ・クランポンはヤマハ・セルマー等他のフランス系のベーム式クラリネットもあるなかで、知名度・普及度が断トツだと思われます。ビュッフェ・クランポンのモデルはかなり種類があり、現在では3系統がグレードに応じて分かれているようです。(クランポンのHPを見ながら分類しましたが、間違っていたらご指摘ください。)また、以下のほかに学生モデル(スチューデントモデル)としてEシリーズ(E-11,E-12,E-13等)があるうようです。

  プロ最高級 プロ高級 プロ基準 学生モデル
R13系統
(音色に優れる)

Tosca
(トスカ)

Festival
(フェスティバル)
R13 C13
RC系統
(音程に優れる)
Divine
(ディヴィンヌ)

RC Prestige
(プレスティージュ)

RC  
BC20系統
(特別な内径)
Legend
(レジェンド)
Tradition
(トラディション)
Vintage
(ヴィンテージ)
 

ということで、ポール・メイエが使っているのはRC系統の最高機種でした。価格は管楽器店DAC永江楽器で確認したところ、定価約140万円でした。

メイエ33歳の動画

ポール・メイエ オフィシャルサイト

Bn / ジルベール・オダン(Gilbert Audin)

Web上に自由に使える写真がなかったため2014年チラシより。右から2番目

フランス式ファゴットのバソンの世界的プレイヤー、ジルベール・オダン氏。1956年、フランス出身です。彼はパリのコンセルヴァトワール教授であり、数多のマスタークラスも開講しています。

バソンは、歴史的にはドイツ式バソンがファゴットというように、バソンの方がバロック楽器に近く、運指もファゴットとは異なっております。音色や音量も大きく異なっています。ファゴットの方が大きな音量で温かみのある音色ですが、バソンの方が少し冷乾な音色で逆に色っぽさがあります。ヤマハのサイトでファゴット、バソン、コントラファゴットの聴き比べができますので、是非どうぞ。

彼が使っている楽器はコチラ。

「ビュッフェ・クランポン プレスティージュ5643」

実はクラリネットで有名なフランスのメーカークランポンが、バソンの生産を現在でも続けています。オダンもクランポンのアーティストとして紹介されていました。バソンのメーカーは他にもDuccasse(デュカス)やAJ等があるようです(アトリエアルファ ファゴットより)。昔のメーカーではTriebert(トリエベール)なんてところもあります。

新品では約190万円だそうです(アトリエアルファ フレンチバスーンより)。ヘッケルのファゴットがウン百万円(最低でも300万円ライン)で、空輸の際に保険がかかるみたいな話も聞きますから、そう考えるとバソンは割と安いのかもしれません。ただ、この金額を安いと思ってしまうと楽器の値段に対して金銭感覚がマヒしている気もします。

バソンの音色

まさかのオダン24歳の動画がありました!

なお、オフィシャルサイトは発見に至っておりません。

Hr / ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(Radovan Vlatković)

ホルンの世界的ソリスト、ラドヴァン・ヴラトコヴィチ氏。お名前のとおりフランス出身ではなく、クロアチア・ザグレブの出身です。1962年1月29日生まれ。出身音大や活動の拠点がドイツでしたので、レ・ヴァン・フランセのメンバーとはドイツで出会ったのかもしれません。彼が使っている楽器はオフィシャルサイトによると次のとおり。

「パックスマン フルダブルホルン20M」

パックスマンはイギリス・ロンドンのホルンメーカーです。この20Mは「ミアウィザー・システム」というものが取り入れられており、F管もBb管も3番から息が入るようになっているそうです。また、パックスマンのホルンの音色はクルスペに近いようです(ホルニストともひろ氏たのしいホルンより)。

当然ヴラトコヴィチの音楽性や技術の賜物でレ・ヴァン・フランセに参加されていると思いますが、他の木管五重奏でアレキサンダーを用いていた方(シュテファン・ドール氏等)は確かに素晴らしかったのですが音色がファゴットと混ざり切らず「ザ・ホルン」な音色だったため、レ・ヴァン・フランセでバソンやクラリネットと完全に混ざりあったヴラトコヴィチの技量をサポートしているのはパックスマンのホルンなのかもしれません。

なお、ネロ楽器によればパックスマンModel20は160~170万円のようです。ネロ楽器のページにはパックスマンの歴史も書かれていますのでよろしければご一読ください。

ヴラトコヴィチ26歳頃の演奏??

ラドヴァン・ヴラトコヴィチ オフィシャルサイト

Pf / エリック・ル・サージュ(Eric Le Sage)

Web上に自由に使える写真がなかったため2016年チラシより。左から3番目

ピアノの世界的ソリストかつソリストの名バイプレイヤーとして知られるエリック・ル・サージュ氏。1964年6月15日、フランス・エクサンプロヴァンス出身です。シューマンの演奏や、プーランクのレコーディングでも有名です。彼の楽器はピアノなので持ち運んではいないと思いますが、どの楽器を使用しているか、まずCDを調べてみました。

2006年にリリースされたCD「エリック・ル・サージュ シューマン:クララのためにVol.1」ではスタインウェイを使っていることがわかりました(Discogsより)。
2011年にリリースされたCD「エリック・ル・サージュ シューマン:ピアノと室内楽Vol.11」でもスタインウェイを使っているようです(MDTより)。

レ・ヴァン・フランセとして来日する際によく使うホールは、東京オペラシティコンサートホール銀座王子ホール文京シビックホール三鷹市芸術文化センター風のホール彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール大阪いずみホールアクロス福岡シンフォニーホール等です(他にもありますが割愛します)。ではそこにあるピアノ(グランドピアノ)は何でしょうか?一覧にしました。

ホール名 楽器① 楽器② 楽器③
東京オペラシティコンサートホール スタインウェイD274 ベーゼンドルファー290  
銀座王子ホール スタインウェイD274 ベーゼンドルファー275  
文京シビックホール スタインウェイ   ヤマハ
三鷹市芸術文化センター風のホール スタインウェイD ベーゼンドルファー275  
彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール スタインウェイD274   ヤマハCFⅢーS
大阪いずみホール スタインウェイD274 ベーゼンドルファー290 ヤマハCFⅢーS
アクロス福岡シンフォニーホール スタインウェイD274 ベーゼンドルファー290 ヤマハCFⅢーS

以上のように、どこのホールにもアメリカスタインウェイがあり、一部ホールにはオーストリア・ウィーンベーゼンドルファー日本ヤマハが置いてありました。一部詳細な型番はありませんでしたが、どのホールにも置かれているという点から考えるとおそらくル・サージュ氏が日本で頻繁に使用する楽器は以下でしょう。

「スタインウェイ D274」

このD274はスタインウェイのグランドピアノの頂点といえるモデルだそうです(スタインウェイのページより)。価格は馬車道ピアノサロンによると2100万円程度。圧倒的な値段ですね。場所次第では家一軒買えちゃいます。

ル・サージュ 44歳ころの録音?

エリック・ル・サージュ オフィシャルサイト(アクセスできないことがあるようです)

あとがき

いかがでしたでしょうか?流石世界的奏者だけあってみなさん一流メーカーの最高機種を用いているようです。弘法は筆を選ばずといいますが、筆を選んだ弘法は毛先1本1本まで神経を通じさせてより優れた書をしたためるようにも思います。自分に合った最高の楽器に巡り合えることが音楽表現の拡大につながることでしょう。

レ・ヴァン・フランセは約2年に1度、だいたい偶数年に来日しています。Fl620万+Ob200万+Cl140万+Bn190万+Hr160万+Pf2100万=総額3,410万円。Over 30 Millionの楽器達とPricelessな技術と音楽に酔いしれてはいかがでしょうか。

全員の動画

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