クラシック・エンターテイナー!クラシック音楽のパフォーマンスグループ10選

こんにちは、H. Châteauです。クラシック音楽ってお堅いというイメージがありませんか?または芸術分野・文化分野でありエンターテイメントではないとか、笑ってはいけないとか、厳しいマナーが存在するといったような別世界の存在のように感じたりすることはありませんか?
その理由は、日本においては「学校の教科書で学び、あるいは先生について習い、舞台で披露する」という舞台芸術性が中心になっているからではないかと感じています。

しかし、日本ではメジャーな部類ではありませんが、クラシック音楽でも舞台芸術性だけではなくエンターテイメント性も持ち合わせた演奏家やパフォーマンスグループが存在します。例えば素晴らしい演奏に加えてカッコいい・面白い演出をつけてみたり、衣装に凝ってみたり、演奏とパントマイムを融合させたり…。

19世紀のピアニストのフランツ・リストも、譜面はおろか鍵盤も見ないで演奏(Wikipedia/暗譜)したり、「白い手袋を脱いでパッと放る」「ハンカチで汗を拭き、パッと投げる」(RadiChubu/失神者続出、フェロモン系作曲家リストを愛した二人の女の物語)ことをするなど、演奏技術だけでなくジャニーズ系アイドルやヴィジュアル系ロックバンドのような演出で観客を熱狂させていました。

Wikimedia CommonsよりLiszt koncertteremben Theodor Hosemann 1842

現在の日本でもNHK交響楽団の「N響 ほっとコンサート」でパントマイムや仮装をしたり、他のプロオーケストラやアマチュアオーケストラ・アンサンブル団体でも仮装や演出でお客さんを楽しませたり、指揮者体験等を行うようなエンターテイメント企画が行われています。

今回はそんなお客さんを楽しませる・魅せる演出やパフォーマンスを行っているグループを10団体をYoutube動画とあわせてご紹介します。

パントマイム・パフォーマンス系(コメディ系)

Mnozil Brass

Wikimedia CommonsよりMnozil Brass (6951757429) © Charlotta Wasteson

1992年にオーストリアで設立された金管七重奏団ノーツィル・ブラス(Mnozil Brass, 日本語ではムノツィル・ブラスの表記が多い)。1993年から活動しており設立から時間がたっているためメンバーは何名か交代していますが、創設メンバーは全員ウィーンの音楽大学の卒業生だったようです。
名前の由来は創設メンバーがMnozilというパブ(居酒屋)で意気投合し、夜な夜な即興セッションをしていたからとのことです(foster musicより)。そのお店かどうかは定かではありませんが、確かにウィーンにはMnozilという名のついた飲食店があるようです(例:Mnozil’s Gastwirtschaft zum Kellergwölb)。

Mnozilをどのように発音するかは英語圏でも分からない方が多いようですが、基本的にはMを発音せず”No-Zeel”と発音するようです(BandFeedより)。日本語ではノーツィルが妥当でしょうか。なお、ドイツ語なのでMを発音しムノツィルが正しいという意見もあるようですが、先のBandFeedの記事には彼ら自身がノーツィルと呼んでいる動画(以下参照)が掲載されていましたので、基本的にはノーツィルかと思われます。

パフォーマンスはクラシックやジャズやポップス(映画音楽)等で、真面目な演奏もありますがユーモアを交えた動作や演技を交えたり、歌を歌うこともあります。
日本でも度々公演やツアーが行われており、最近では2019年に来日したようです。金管アンサンブルはポップな演奏も多いからでしょうか、ユーモア表現ととても親和性があるように感じております。



公式サイト

ノーツィル・ブラス / MNOZIL BRASS

MozART Group

Wikimedia CommonsよりGrupa MoCarta(2016)

1995年にポーランドのワルシャワで結成されたMozART Groupポーランド語ではGrupa MoCartaという弦楽四重奏団体です。日本語ではなんていうのでしょう…私はモツ(ズ)アルトグループまたはモツ(ズ)アートグループのように読んでいるかもしれません。2020年に結成25周年を迎えました。

メンバーはヴァイオリンのフィリップ・ジャスラー(Filip Jaślarミハウ・シコルスキ(Michał Sikorski)、ヴィオラのパヴェウ・コワルク(Paweł Kowaluk)、チェロのボレスワフ・ブラシュチク(Bolesław (Bolek) Błaszczyk)の4名です(日本語読みは不正確かもしれません)。チェロのブラシュチク氏は、2000年に自動車事故で亡くなったアルトゥラ・レニオナ(Artura Reniona)氏の後任です。
全員ワルシャワかウッチ(ワルシャワ西のポーランド第三の都市)の音楽アカデミーを卒業しています。

主にコメディ調のパフォーマンスで、演奏しながらのパントマイムや○○風モーツァルトや二人羽織風の演奏等があり、さらに多くの著名人とも共演しています。全員がユーモラスな動きやパフォーマンスができます。
ガラコンサートの出演や受賞歴も多いですが、ここでは割愛しますので詳細は公式サイトをご覧ください。
また、個人的にはポーランドの俳優&マイムアーティストのイレネウス・クロスニー(Ireneusz Krosny)氏とのコラボがとても面白くて好きです。



クロスニー氏とのコラボ


公式サイト

MozARTグループ / MozART group
公式Youtubeチャンネル / TheMozARTGROUP

Rainer Hersch

Wikimedia Commons よりRainer Hersch Monday 1st Apri 2013 @ Royal Festival Hall © MC Craik

1962年生まれのイギリスの指揮者・俳優・コメディアンであるレイナー・ハーシュ(またはライナー・ハーシュ, Rainer Herschは、主としてコメディー・コンサートで有名です。ランカスター大学で経済学を学びながら学生コメディグループに参加し、コメディアンを志しました。音楽ではピアノをプライベートで習っていたようですが、ロンドンのコンセルヴァトワールで3年間指揮を学び、王立音アカデミーではマスタークラスを受講したようです。

ピアノとプロジェクター&スクリーンとマイクを使って独りで行うソロ・ショーのAll Classical Music Explained (ACME)を1996年に行い、以降10年程度はそのようなソロ・ショーやデュオまたはトリオ・ショーを行っていましたが、2007年からはオーケストラでのコメディ・ショーが行われ、自身のレイナー・ハーシュ・オーケストラだけでなく世界中のオーケストラと共演しています。公式サイトの自己紹介も中々ウィットに富んだジョークもあり、コメディアンなのだなぁと感心します。

私も演奏会でプロジェクター&スクリーンと実際の楽器を用いたトーク&ライブ(内容は音楽知識や別の分野とのクロスなど)を行っていますが、このようなコメディ調は憧れがあります。



公式サイト

レイナー・ハーシュ / Rainer Hersch

IGUDESMAN & JOO

IGUDESMAN & JOO(イグデスマン&ジョーはロシアのヴァイオリニストであるアレクセイ・イグデスマン(Aleksey Igudesman)と韓国系イギリスのピアニストであるヒュンキ・ジョー(Hyung-ki Jooが2004年に二人で結成したクラシックのコメディ・パフォーマンスを行うグループです。

2人はイギリスのユーディ・メニューイン音楽学校で出会い、その後別の音大に進学し、それぞれ様々なプロの音楽活動を経たうえでグループを組みました。
このIGUDESMAN & JOOの活動は2人の音楽活動のメインではなく数ある中の1つではありますが、世界中の数々の音楽祭等で講演を行い称賛を受けています。
また、世界的音楽家とも数々共演をしております。



公式サイト

イグデスマン&ジョー / IGUDESMAN & JOO
公式Youtubeチャンネル / IGUDESMAN JOO
アレクセイ・イグデスマン / ALEKSEY IGUDESMAN
ヒュンキ・ジョー / HYUNG-KI JOO

スギテツ

2004年に日本のピアニストの杉浦哲郎とヴァイオリニストの岡田鉄平により結成された「クラシックを遊ぶ音楽実験室」をテーマに活動するデュオ「スギテツ」です。杉浦氏は作編曲家としてCM音楽や舞台音楽・鉄道関連の音楽作曲として活動しており、岡田氏は桐朋音大院修了後、複数のコンクール入賞やCD・アルバムリリース等で活動しています。

デュオでの活動では「題名のない音楽会」「らららクラシック」「おんがくブラボー」等の音楽テレビ番組に度々出演するほか、音楽の著名人や日本各地のオーケストラとの共演を行い、2013年頃からはほぼ毎年全国ツアーや学校公演で日本中を駆け回っておられるようです。私もテレビ番組で拝見した記憶があります。日本語でクラシック・コメディを見られ、かつ内容もクスッとするような歌手や環境音が題材に使われているのも嬉しいですね。



公式サイト

スギテツ / スギテツ official websaite sugitetsu.com
公式Youtube / SUGITETSUCHANNEL

PaGAGnini

2007年にスペインのヴァイオリニストのアラ・マリキアン(Ara Malikianが中心となって結成した弦楽四重奏のパフォーマンスグループPaGAGnini(パギャグニーニ)があります。このグループは2016年1月に来日して東京と西日本で日本ツアーを行いました(テレビ西日本ホームページ)。

メンバーはヴァイオリンにアラ・マリキアン(Ara Malikian)、エドゥアルド・オルテガ(Eduardo Ortega)フェルナンド・クレメンテ(Fernando Clemente)、チェロにゲオルギ・フォウルドナヘブ(Gueorgui Fourdnajev)がいます。なお、2016年(1月より後だと思われます)にはヴァイオリンのアラ・マリキアンはトーマス・ポティロン(Thomas Potiron)に交代したようです。出身は様々ですが、主にスペインやフランスの音楽院を出ており、オーケストラ団員や音楽院教師や作曲家として活動していたメンバーが集まったようです。

「パッヘルベルのカノン」のパフォーマンスが最も有名だと思いますが、一曲をマイム系パフォーマンスを交えながらノリノリにしたりアレンジしたり別の曲を入れたりという構成が多く、スペインのグループらしいラテン系のノリがよく入るのが特徴的です。




公式サイト

PaGAGnini / PAGAGNINI

仮装・被り物系

ズーラシアンブラス(ズーラシアンフィルハーモニー管弦楽団)

2000年によこはま動物園ズーラシアの1周年を記念して結成され、園内で飼育されている希少動物の被り物をして演奏する金管五重奏団「ズーラシアンブラス」からはじまり、弦楽四重奏「弦うさぎ」(実際はズーラシアンブラスより弦うさぎの方がデビューは早いようです)、フルート&ハープ二重奏「ことふえパピヨン」、サックスの「サクソフォックス」やクラリネットの「クラリキャット」などだんだんと仲間が増え、2008年には「ズーラシアンウインドアンサンブル」、2011年には「ズーラシアンフィルハーモニー管弦楽団」がデビューしました。その後もメンバー(キャラクター)やグループが増えており、子供向けのコンサートをメインに現在でも精力的に活動しています。

よこはま動物園ズーラシアは市営の動物園ですが、ズーラシアンブラスは株式会社スーパーキッズにより運営されています。各マスコットに中の人がいるのかどうかは明言されておりませんが、公式サイトの制作スタッフの欄には多くの音大卒業者・修了者や現役プロオケ奏者、コンクール入賞者が名前を連ねており、技術レベルの高さが伺えます。



公式サイト

ズーラシアンブラス / ZOORASIANBRASS
公式Youtube / zoorasianbrass

演出系

André Riu

Wikimedia CommonsよりAndre Rieu 2009 © Charlie1965nrw

1949年生まれのオランダのヴァイオリニスト・指揮者で、ウィンナ・ワルツに造詣が深いことから現在では「ワルツ王」のあだ名もついているアンドレ・リュウAndré Rieu)。彼は1978年にマースリヒト・サロンオーケストラを結成し、1987年にワルツ音楽を続けるためにヨハン・シュトラウス・オーケストラ(Johann Strauss Orchestra)に変更して以降現在でも活動を続けています。

このオーケストラの特徴は、ステージ上で様々な衣装を着たり、楽器をいろいろな場所に配置したり、観客含めみんなでワルツを歌ったり踊ったり、さながら日本の音楽ライブのようなことをオーケストラでやっていることです。クラシックだけでなくポピュラー音楽や民族音楽(フォークミュージック)を交え、音楽を気軽に楽しめるようなパフォーマンスが行われています。特にD. ショスタコーヴィッチの「ステージオーケストラのための組曲」から第二ワルツ(ザ・セカンド・ワルツ)の演奏が有名で、十八番のようです。

世界中で公演しており、数々の賞を受賞しています。日本には2001年から2009年まで度々来日していたようですが、近年は日本での公演はないようです。




公式サイト

アンドレ・リュウ / André Rieu and his Johann Strauss Orchestra
公式Youtube / André Rieu

Red Priest

Wikimedia CommonsよりRed Priest (ZMF 2015)

1997年にイギリスで結成されたレッド・プリースト(Red Priestは、その名が示すとおり「赤毛の司祭」と呼ばれたA. ヴィヴァルディの曲を中心に活動しています。その特徴は衣装もさることながら、即興演奏のような楽曲アレンジとロックのような演出が行われることです。Wikipediaではバロック楽器のグループと書かれており、日本でも古楽演奏グループに分けられますが、そうは思えない熱量や演出であります。
2020年現在、メンバーはリコーダーのピアーズ・アダムス(Piers Adams)、ヴァイオリンのアダム・サマーヘイズ(Adam Summerhayes)、チェロのアンジェラ・イースト(Angela East)、チェンバロのデイヴィッド・ライト(David Wright)の4名からなります。以前のヴァイオリンはジュリア・ビショップ(Julia Bishop)、チェンバロはハワード・ビーチ(Howard Beach)だったと思われます(アレグロミュージックより)。

世界中で演奏活動をするだけでなく、TV番組出演やCDのリリースなどでも活動しており、日本にも2006, 2007, 2009年頃に来日していたようです。NHKの番組でも取り上げられていました。




公式サイト

レッド・プリースト / RED PRIEST
公式Youtube / Red Priest

2 Cellos

2011年にマイケル・ジャクソンのSmooth Criminalの演奏をYoutubeに公開したことで注目を浴び、現在はソニー・ミュージックエンタテインメントと契約している2CELLOS(トゥーチェロズ, 英語Wikipedia)。その名のとおり2本のチェロによるユニットで、スロベニア出身のルカ・スーリッチ(Luka Šulić)とクロアチア出身のステファン・ハウザー(Stjepan Hauser)の2名で活動しています。

2本のチェロによるロックや映画音楽などの演奏が有名ですが、ルカ・スーリッチはザグレブ(クロアチア)の音楽院で学び、ウィーン留学を経てロンドンの王立音楽アカデミーを出ており、ステファン・ハウザーもロンドンのトリニティ・ラバン音楽院を経てマンチェスターのロイヤル・ノーザン音楽院を出ています。2人ともこのユニットを組む前はコンクールで競い合うライバルだったようです。

2011年から毎年来日してツアーや公演を行っているようです。かっこいいですね。



公式サイト

2CELLOS / 2CELLOS Official Website
SONY MUSIC / 2CELLOS
公式Youtube / 2CELLOS

あとがき

いかがでしたでしょうか?真面目な演奏も大好きですが、私はこのようなユーモアやパフォーマンスに富んだ演奏も楽しくて大好きです。このような演出をするにはものすごい演奏技術と他の技術(話術・演技力・etc…)も必要ですので、楽しむと同時に敬意も抱きます。

今回ご紹介した団体の多くは1990代~2000年代初頭に結成された団体であり、グループによってはメンバーがかなり交代していたり、あるいは御歳を召されていたりしておりますので、もしかしたらあと10~20年内に解散しているグループがあるかもしれません。今後も若いグループが出てきてクラシックのコメディやパフォーマンスの流れを絶やさずにいてほしいと感じています。

本記事ではご紹介できませんでしたが、他にも
ドイツの女性4人による弦楽四重奏「Salute Salon」(公式ホームページ

日本の高嶋ちさ子氏による「12人のヴァイオリニスト」(公式ホームページ

が有名かと思います。もし、他にパフォーマンスグループをご存知でしたら是非ご教示ください。別記事に纏めていきたいと思います。

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