こんにちは、H. Châteauです。日本のクラシック音楽では、木管楽器(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット)と金管楽器のホルンを中心に構成される少人数のアンサンブルを木管アンサンブルと呼んでいます。一般的には四重奏(カルテット)や五重奏(クインテット)が人気ですが、今日はそれよりも大人数になる九重奏以上の木管アンサンブル曲を15曲ご紹介します(動画数が多く読み込みに時間がかかるかもしれません…すみません。)。なお、六重奏~八重奏も含めてご紹介しようと思いましたが、調べてみると思いのほか多かったので、別の記事でご紹介します。
九重奏
1.G. ドニゼッティ / 木管楽器のためのシンフォニア ト短調(1817)
イタリアのオペラ作曲家、ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti, 1797年~1848年)が1817年(20歳)に作曲した、Fl, 2Ob, 2Cl, 2Hr, 2Fgのための九重奏曲です。単一楽章で、6~7分程度です。作曲者が若いころの曲ですが、この時にはすでにオペラが大好きだったのでしょう。曲がオペラの序曲のような雰囲気(たまに出てくるソロが歌曲のよう)になっていますし、短調の主題が最後に転調して明るくなります。楽器の使われ方のバランスもよく、メロディが何度も出てきて耳なじみもよいので、演奏会の最初の曲にちょうど良いのではないでしょうか。
IMSLP / Sinfonia in G minor (Donizetti, Gaetano)
2.C. グノー / 小交響曲(1885)
フランスの作曲家、シャルル・グノー(Charles Gounod, 1818年~1893年)が1885年(67歳)に作曲した、Fl, 2Ob, 2Cl, 2Hr, 2Fgのための九重奏曲です。小交響曲の名のとおり全部で4楽章あり、演奏時間は20分程度です。楽器構成は古典的な八重奏(ハルモニームジーク)にフルートを足した形で、後期ロマン派の時代の曲としては響きがやや古典的であるものの、フルートが活躍する素朴でやさしい、木管らしい曲です。大規模編成木管アンサンブルの定番中の定番曲です。
I. Adagio et Allegretto
II. Andante cantabile
III. Scherzo. Allegro moderato
IV. Finale. Allegretto
Wikipedia(日本語) / 小交響曲(グノー)
Wikipedia(フランス語)/ Petite Symphonie de Charles Gounod
IMSLP / Petite symphonie (Gounod, Charles)
十重奏
3.J. ラフ / シンフォニエッタ, Op.188(1873)
スイスの作曲家、ヨアヒム・ラフ(Joachim Raff, 1822年~1882年)が1873年(51歳)に作曲した、2Fl, 2Ob, 2Cl, 2Hr, 2Fgの十重奏曲です。全部で4楽章あり、演奏には25~27分程度かかります。楽器構成は各木管楽器2本ずつのダブル・クインテットで、どの楽章も各楽器の特徴が生かされた作りになっていますが、比較的フルート1番とクラリネット1番が活躍します。
ラフのオーケストレーションはどれも木管楽器の使い方が秀逸で、この曲はその粋を集めたものとなっています。全体的にリズミカルで聴いてても演奏してても楽しめます。演奏量の多さと作曲者のマイナーさから演奏されることは多くないですが、グノーと同様大規模編成木管アンサンブルの定番曲になる名曲です。
I. Allegro
II. Allegro molto
III. Larghetto
IV. Vivace
IMSLP / Sinfonietta, Op.188 (Raff, Joachim)
4.E. ベルナール / ディベルティスマン, Op.36(1884)
フランスの作曲家、エミール・ベルナール(Émile Bernard, 1843年~1902年)が1884年(41歳)に作曲した、2Fl, 2Ob, 2Cl, 2Hr, 2Fgの十重奏曲です。全部で3楽章あり、演奏には23~25分程度かかります。タイトルのディベルティスマンは「ディベルティメント」のフランス語です。作曲された年がまだはっきりしておらず、1884年や1889年、1894年という情報もありますが、初期に出版された楽譜が1890年頃のものなので、少なくとも1890年以前だと思われます。ここではIMSLPに基づき1884年としました。
第一楽章、第二楽章とも軽やかで、細かい動きがいろいろな楽器に引き継がれます。第一楽章ではシンコペーション、第二楽章では3拍子の中に2拍子のリズムが出る等、リズムに特徴的な部分があります。第三楽章はAndanteで始まりますが、途中のAllegroでFinaleの雰囲気を出しつつ、第一楽章のメロディーを再現してからクライマックスを迎えます。
I. Andante sostenuto – Allegro molto moderato
II. Allegro vivace
III. Andante – Allegro non troppo
Wikipedia(フランス語) / Émile Bernard (compositeur)
IMSLP / Divertissement, Op.36 (Bernard, Émile)
5.A. カプレ / ペルシャ組曲(1900)
フランスの作曲家、アンドレ・カプレ(André Caplet, 1878年~1925年)が1900年(22歳)に作曲した、2Fl, 2Ob, 2Cl, 2Hr, 2Fgの十重奏曲です。全部で3楽章あり、演奏は15~17分程度です。各楽章のタイトルがペルシャ語で、以下のようになっています。
I. Scharki
II. Mihawend
III. Iskia Samaisi
この曲の解説はネット上でも少なく、各楽章のタイトルの意味が分からないのですが、Academy Chorale and OrchestraのサイトやCORYMBUSのサイトに多少書かれていましたのでそちらを引用致します。
Scharkiの意味はペルシャ語で「東部(東方)のスタイルで行われたこと」であり、この曲においては歌あるいはバラード(第一楽章の主題)のスタイルのことを指していると思われます。Mihawendは、古代ペルシャの地名ニハーヴァンドを音訳したものと考えられています。この地名が元になったアラブ古典音楽の「ナハーワンド(Nahawand)という名前の音階・旋法のシステム(アラビア音楽用語で「マカーム」といいます。)が使われているものと思われます。このナハーワンド音階は、Cで始めると「C D Eb F Gb A Bb C」のような音階とのことです(この曲ではC始まりではないので別の音階になっていると思います。)。Iskia Samaisiの正確な訳はわかっておりませんが、イスラム教神秘主義哲学の「スーフィズム」における、一心不乱に回り踊りながらトランス状態に入って神に祈祷する「回旋舞踊(セマー, Sama)」のことを指していると思われます。エネルギッシュなダンスの曲なので、中らずと雖も遠からず、というところではないでしょうか。
Wikipedia(英語) / André Caplet
IMSLP / Category:Caplet, André
I. Scharki
II. Mihawend
III. Iskia Samaisi
6.A. バード / 管楽器のためのセレナーデ, Op.40(1901?)
アメリカの作曲家、アーサー・バード(Arthur Bird, 1856年~1923年)が1901年(35歳)?に作曲した、2Fl, 2Ob(E.H持ち替え), 2Cl, 2Hr, 2Fgの十重奏曲です。全部で4楽章あります。楽譜は2017年時点IMSLP等にはありません。しかし、以下のYoutube動画を聴いている限りはべらぼうに難しい印象は受けず、楽器の重ね方やメロディも美しく、今後木管アンサンブルのレパートリーに含められていくでしょう。どの楽章もリズミカルで楽しいです。
I. Allegro moderato
II. Adagio grazioso
III. Allegro assai
IV. Finale: Allegro energico
IMSLP / Category:Bird, Arthur H.
IMSLP / List of works by Arthur H. Bird
バードは、他にも1889年に木管十重奏のための組曲(ニ長調)(Youtube, 他Youtube)を作っていますが、楽譜はIMSLP等にはありません。しかしこちらも上記のセレナーデ同様、木管アンサンブルのレパートリーになっていくと思われます。
7.G. エネスク / 管楽十重奏, Op. 14(1906)
ルーマニアの作曲家、ジョルジェ・エネスク(George Enescu, 1881年~1955年)が1906年(25歳)に作曲した、2Fl, Ob, EH, 2Cl, 2Hr, 2Fgの十重奏曲です。2ndオーボエではなく、イングリッシュ・ホルンを使っているのが珍しいです。全3楽章構成で、演奏は24分程度です。楽章のタイトルはフランス語です。
エネスクはパリ音楽院でマスネやフォーレに作曲を習い、和声もフランスの作曲家アンドレ・ジェダルジュに習っています。エネスクがパリ音楽院を1899年に卒業してからそれほど経っていない時期に書かれた曲ですので、フランスらしい柔らかな曲調と、様々な楽器を重ねることで色鮮やかで響きの美しい曲になっています。
I. Doucement mouvementé (柔らかく(やさしく)、動きをもって)
II. Modérément (適度に)≒ Moderato
III. Allègrement, mais pas trop vif (快活に、でも早すぎずに)≒ Allegro ma non troppo
Wikipedia(英語) / George Enescu
Wikipedia(フランス語) / Dixtuor à vents
IMSLP / Decet for Winds, Op.14 (Enescu, George)
8.D. ミヨー / 室内交響曲第5番, Op.75(1922)
フランスの作曲家、ダリウス・ミヨー(Darius Milhaud, 1892年~1974年)が1922年(30歳)に作曲したPicc(Fl持ち替え), Fl, Ob, E.H, Cl, BsCl, 2Fg, 2Hrの十重奏曲です。今までの曲と楽器構成が一線を画しており、アンサンブルには使われにくいピッコロやバスクラリネットを用いています。曲は3楽章構成で、演奏時間は6分と短いものになっています。
近代曲らしいリズムの複雑さや、近代的な和音を用いているため、演奏するのは容易なことではないでしょう。ただ、木管楽器のはずなのに金属的な和音が響いたり、リズムが不思議と癖になるなど、魅力的な曲であることは確かです。
I. Rude(荒々しく)
II. Lent(ゆっくりと)
III. Violent(激しく)
IMSLP / Symphonie de chambre No.5, Op.75 (Milhaud, Darius)
9.J. フランセ / 七つのダンス(1971)
フランスの作曲家、ジャン・フランセ(Jean Françaix, 1912年~1997年)が1971年(59歳)に作曲した、2Fl, 2Ob, 2Cl, 2Hr, 2Fgの十重奏曲です。タイトルのとおり全部で7曲あり、演奏時間は12~14分程度です。フランセの著作権が切れるのはだいぶ先であるため、演奏したい方は楽譜を購入する必要があります。
この七つのダンスは1935年に作曲されたフランセ自身のバレエ音楽「ソフィーの不幸(Les malheurs de Sophie)」に基づいています。各曲のタイトルを和訳してみましたが、「ソフィーの不幸」の情報が少ないため正確ではありません。かなり近代、というか現代に書かれた曲ですが、どの曲もメロディーもリズムもあるので、思いのほか親しみやすいと思います。フランスらしい柔らかく軽い楽曲が多いです。
I. Le jeu de la poupée(人形のゲーム)
II. Funérailles de la poupée(人形の葬儀)
III. La présentation des petits amis(プティ・アミ(ボーイフレンド)からのプレゼント)
IV. Variation de Paul(ポールのヴァリエーション)
V. Pas de deux entre Sophie et Paul(ソフィーとポールのパ・ドゥ・ドゥ)
VI. Le goûter(おやつ)
VII. Danse des filets à papillons(虫捕り網のダンス)
Wikipedia(英語) / Jean Françaix
Wikipedia(英語) / List of compositions by Jean Françaix
Wikipedia(フランス語) / Jean Françaix
十一重奏
10.L. A. コッサルト / 管楽十重奏とハープのための組曲, Op.19(1907)
ポルトガル(スイス)の作曲家、レランド・アルバート・コッサルト(Leland Albert Cossart, 1877年~1956年)が1907年(30歳)に作曲した、木管十重奏(2Fl, 2Ob, 2Cl, 2Hr, 2Fg)とハープのための十一重奏の組曲です。作曲者はポルトガルのマデイラ出身ですが、スイスのローザンヌ音楽院で学び、ドイツのドレスデン音楽院で教鞭をとる等した後、スイスで定住生活して音楽を教えていたため、暫定的にスイスの作曲家ともしています。フランス語読みだと名前は「レラン・アルベール・コサール」みたいになると思います。
コッサルトについてはあまり研究されていないのか情報が少なく、有名作曲家にかかわったかどうかもわかりません。また、死没年も1956年説と1965年説がありはっきりしていませんが、どちらの場合でも日本ではすでにパブリックドメインとなっています。なお、アメリカやヨーロッパでは2017年現在著作権保護期間が70年のため、まだパブリックドメインにはなっていません。
曲は2部構成となっており、それぞれ3曲ずつあります。第一部の2曲目と3曲目の後半では、2ndオーボエがイングリッシュ・ホルンに持ち替えます。曲自体はロマン派のものなので、スコアをざっと見た限りでは耳なじみがよさそうで、演奏も極めて難しそうというわけではありませんでした。2017年時点でYoutubeの演奏が見当たらず、IMSLPのスコアも第一部しかありませんでしたので、今後取り上げられるのが増えるのを期待しています。
第一部
I. Intrada
II. Elegie
III. Intermezzo
第二部
IV. Canzonetta Napolitana
V. Alla Polacca
VI. Thema mit Variationen (Capriccio Finale)
IMSLP / Suite for 10 Winds and Harp, Op.19 (Cossart, Leland Albert)
IMSLP / Category:Cossart, Leland Albert
十二重奏
11.A. ロセッティ / パルティータ へ長調 M.B18(1785以前)
チェコ(ドイツ)の作曲家、アントニオ・ロセッティ(Antonio Rosetti, 1750年~1792年)が1785年(35歳)より前に作曲し1875年に出版された、2Fl, 2Ob, 2Cl, 3Hr, 2Fg, violone(ヴィオローネ、コントラバスの先祖)の十二重奏曲です。ロセッティはイタリア語名ですが、生まれがチェコでチェコではフランチシェク・アントニーン・レスレル(Frantisek Antonin Rössler)、活動はドイツが中心でドイツではフランツ・アントン・レスラー(Franz Anton Rösler)で知られますが、彼自身は20代のうちにイタリア語名で名乗っていたようです。
ロセッティはコントラバス奏者であり、作曲家でもありました。彼の生まれがチェコで、活動域がロシアだったりドイツだったりして、しかもフランスでも有名になったりしましたので、いまいちどの国の作曲家は判然としませんが、最も長いことドイツを拠点としたようですので、一応ドイツの作曲家にもしております。ロセッティはかなり多作で、木管アンサンブル曲も判明しているだけで29曲残しています。ロセッティが活躍した時代はほとんどモーツァルトとかぶっておりました。
この十二重奏は古典的な雰囲気の曲ですが、ホルンが3本だったりコントラバスが入る等珍しい構成です。ホルン3本と聞くとベートーヴェンの交響曲3番(1804年作曲)の狩りのホルンを思い浮かべたり、コントラバスと聞くとモーツァルトのグランパルティータ(1781年作曲)を思い浮かべたりしますが、少なくともベートーヴェンよりは前に作曲されていますので、もしかしたら影響を与えたかもしれません。ただ、あまりにもロセッティに関する情報が少ないため、実際誰から影響を受け、誰に影響を与えた作曲者だったのかわからないのが残念なところです。4楽章構成で演奏時間は20分程度ですが、アンサンブル曲として聴くよりも小さな交響曲として聴いた方がしっくりくるかもしれません。
I. Allegro
II. Andante scherzante
III. Menuet: Fresco ma allegretto
IV. Allegro: Finale a la Chasse
IMSLP / Partita in F major, M.B18 (Rosetti, Antonio)
ロセッティは他にも多くの木管アンサンブル曲を作っていますので、是非聴いてみてください。
Wikipedia(英語) / Antonio_Rosetti
IMSLP / Category:Rosetti, Antonio
12.ドヴォルザーク / 管楽セレナード, Op.44(1878)
チェコの作曲家、アントニン・ドヴォルザーク(Antonín Dvořák, 1841年~1904年)が1878年(37歳)に作曲した、2Ob, 2Cl, 2Fg, C.Fg, 3Hr, Vc, CBの十二重奏曲です。大規模編成としてはフルートがないことや、コントラファゴットやチェロが加わっていることが大変特徴的です。
第三楽章のホルンによる伴奏が「ムーンライトセレナーデ」のようなジャズのような気がしますが、この曲を書いたときはまだドヴォルザークはアメリカに渡っていません。アメリカ自体はイギリスとのアメリカ独立戦争を経て1783年にイギリスからの独立していますので、アメリカの影響がヨーロッパに及んでいた可能性はありますが、ジャズ自体は「19世紀末にアメリカ南部で西洋音楽とアフリカ系アメリカ人のリズム感覚と音楽形式とが融合して生まれた」とされているので、第三楽章のリズムのような音型はもともとヨーロッパのものだったのかもしれません。それでもクラシック音楽としては珍しいリズムになっていると思います。
そのほかの楽章も、チェロとコントラバスによって充実した低音が荘厳さを醸し出すマーチ風の第一楽章、ボヘミアの草原や風のようなメヌエットの第二楽章、ドヴォルザークの鉄道好きが高じたと思えてしまうような雰囲気(かつ最後に第一楽章のテーマも再現されてフィナーレを迎える)の第四楽章など、他の木管アンサンブル曲にはない魅力に満ちた曲となっています。
I. Moderato quasi marcia
II. Menuetto: Tempo di minuetto; Trio: Presto
III. Andante con moto
IV. Finale: Allegro molto
Wikipedia(日本語) / 管楽セレナード (ドヴォルザーク)
IMSLP / Serenade for Wind Instruments, Op.44 (Dvořák, Antonín)
ベルリン・フィルの演奏(第4楽章のみ途中まで)
十三重奏
13.W. A. モーツァルト / セレナーデ 変ロ長調(グランパルティータ), K.361/370a
オーストリアの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年~1791年)が1781年(25歳)に作曲した、2Ob, 2Cl, 2Bhr, 4Hr, 2Fg, CBの十三重奏です。古典派のアンサンブル曲としてはロセッティの曲とならんで大規模ですが、フルートがないあたりを見るとハイドンも作曲していた古典的な管楽八重奏(ハルモニームジーク)を拡大したものと見ることができます。他の大規模アンサンブル曲と異なり、バセットホルン(中低音クラリネット属)が使われているのが特徴的ですが、モーツァルトがバセットホルンの名手、アントン・シュタードラーとヨハン・シュタードラーの兄弟にちょうど出会った頃であることを考えるとそんなに不思議ではありません。
曲は全部で7楽章あり、演奏時間が50分になる長大な曲です。この長さと楽器の多さの管楽アンサンブル曲は他では見られませんが、どの楽章もモーツァルトらしく洗練されており、響きが美しいです。全曲通して聴く最後のフィナーレは、楽しかった旅やお祭りの終わりのような感じがします。
I. Largo. Molto Allegro
II. Menuetto
III. Adagio
IV. Menuetto. Allegretto
V. Romance. Adagio
VI. Tema con variazioni
VII. Finale. Molto Allegro
Wikipedia(日本語) / グラン・パルティータ
IMSLP / Serenade in B-flat major, K.361/370a (Mozart, Wolfgang Amadeus)
International Chamber Music Festival in Salon-de-Provence(7曲目のみ)
14.リヒャルト・シュトラウス / 13管楽器のためのセレナーデ, Op.7(1881)
ドイツの作曲家、リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss, 1864年~1949年)が1881年(17歳)に作曲した2Fl, 2Ob, 2Cl, 4Hr, 2Fg, Cfg or Tuの十三重奏曲です。単一楽章で、演奏時間は10分程度です。モーツァルトのグランパルティータを意識して作曲したようですが、あえてバセットホルンは用いておらず、フルートが使われています。
リヒャルト・シュトラウスにしては非常に響きが古典的な(というよりもクラシック和声に忠実な)楽曲で、一瞬ふとモーツァルトやグノーっぽさを感じますが、すぐに木管アンサンブルにしては軽やかというよりも重厚で充実した響きのある楽曲になります。ホルンやファゴット・コントラファゴットの使い方はさすがリヒャルト・シュトラウスで、他の木管アンサンブル曲の中でも低音の響きが際立っている名曲です。
なお、15.でご紹介する「13管楽器のための組曲」よりも作曲年が早いのに、作品番号が後になっておりややこしいです。
Wikipedia(日本語) / 13管楽器のためのセレナード (リヒャルト・シュトラウス)
IMSLP / Serenade in E-flat major, Op.7 (Strauss, Richard)
15.リヒャルト・シュトラウス / 13管楽器のための組曲, Op.4(1884)
ドイツの作曲家、リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss, 1864年~1949年)が1884年(20歳)に作曲した2Fl, 2Ob, 2Cl, 4Hr, 2Fg, Cfg or Tuの十三重奏曲です。全4楽章で、演奏時間は23~25分程度です。先に作られたセレナーデと楽器構成は変わりませんが、楽章が増えて、演奏時間も延びています。「13管楽器のためのセレナーデ」よりは高音楽器のメロディーが目立つようになっていますが、ホルンにソロがあったり、低音楽器の響きが重厚である等、こちらもリヒャルト・シュトラウスの個性が十分に発揮されています。
楽曲は第一、第二楽章がクラシカルですが、第三楽章から近代的な雰囲気があります。これは、セレナーデを高く評価したハンス・フォン・ビューローが同じ編成の大規模な曲をシュトラウスに依頼したのですが、シュトラウスが第二楽章まで書いた後にビューローが「バロック風の組曲」を望んでいたと聞き、急遽第三、第四楽章をバロック形式で書くことになったためです。形式をバロック時代のもの(第三楽章が複合三部形式、第四楽章がフーガ。前半の2つ楽章はロマン派的なソナタ形式)にした分、和音や楽器の使い方をロマン派から少し脱却してバロック(いびつな真珠、の意)にしたようにも感じます。
ところで、バロックの意味が「ルネサンスの次に続く時期と芸術」と定義されたのは19世紀末でした。1855年に定義され始め1878年に辞書に載ったらしく、ビューローがリヒャルト・シュトラウスに1884年に依頼した際は、定義されて10年に満たない頃かつバロック・リバイバルの時期でした。ビューローが「バロック風の組曲」を望んだのも、そのあたりの芸術の流れがあったからかもしれません。
I. Praeludium
II. Romanze
III. Gavotte
IV. Introduction und Fuge
Wikipedia(日本語) / 13管楽器のための組曲 (リヒャルト・シュトラウス)
IMSLP / Suite in B-flat major, Op.4 (Strauss, Richard)
I. Praeludium
II. Romanze
III. Gavotte
IV. Introduction and Fugue
あとがき
いかがでしたか?15曲は多かったかな…ページの読み込みに時間かかるかな…と思いつつ、どれも甲乙つけがたい名曲ぞろいでしたのでまとめてご紹介しました。
プロの演奏でもアマチュアの演奏でも、知らない曲ばかりだと聴きに行く気が少し下がることがありますが、この記事で一つでも好みの曲を見つけていただき、演奏会のレパートリーを増やしたりいろいろな木管アンサンブルの演奏会に足を運ぶきっかけになったりしたら嬉しい限りです。
参考 その他の大規模編成木管アンサンブル
Wikipedia(英語) / Decet (music)
Wikipedia(英語) / Duodecet
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