こんにちは、H. Châteauです。クラシックの木管アンサンブルでは、ピアノと一緒に演奏するものもあります。ピアノが入ると分散和音や重低音で伴奏できるので、ファゴットやホルンもメロディーを演奏できるようになります。今日は、とても華やかで流麗なピアノと木管のアンサンブル曲のうち、三重奏・四重奏・五重奏のものを紹介します。曲はスコア(総譜)を見ながらだとより楽しめますので、リンク先の楽譜もご活用ください。
三重奏(木管二重奏とピアノ)
1.Cl / Fg / Pf グリンカ「悲愴三重奏曲(トリオ・パセティーク)」
1804年から1857年のロシアの作曲者、ミハイル・グリンカのD-moll(ニ短調)の曲。
4つの楽章からなり、演奏時間は15分程度です。悲愴といいつつ明るい部分もありますし、切なく熱い印象もある曲です。
I. Allegro moderato | 3人が交互に悲しげなテーマを演奏していきます。 |
II. Scherzo. Vivacissimo | 優しく軽やかな曲調です。 |
III. Largo | ClとFgが順番に低音から高音まで悲しくも美しいソロを歌います。 |
IV. Allegro con spirito | 第1楽章のテーマを速く熱くしたような楽章です。短め。 |
楽譜はIMSLPで入手できます。
IMSLP / Trio pathétique (Glinka, Mikhail)
2.Ob / Hr / Pf ライネッケ「オーボエ、ホルン、ピアノのための三重奏曲」
1824年代から1910年のドイツの作曲者、カール・ライネッケのA-moll(イ短調)の曲。
4つの楽章からなり、演奏時間は30分程度。三重奏にしては長い曲です。音の幅が広いのかホルンの印象なのか、雄大な感じにも聴こえます。
I. Allegro moderato | ややエキゾチックなメロディーが印象に残ります。 |
II. Scherzo: Molto vivace | トトトみたいな3つの同じ音が印象的な軽やかな楽章です。 |
III. Adagio | ホルンの長いソロやオーボエソロが美しいです。 |
IV. Finale: Allegro ma non troppo | しっとり明るい曲調で、中間のホルンソロがFinale感を出します。 |
楽譜はIMSLPで入手できます。
IMSLP / Trio for Piano, Oboe, and Horn, Op.188
なお、ライネッケは「クラリネット、ホルン、ピアノのための三重奏曲」(動画 / youtube)(楽譜 / IMSLP)という曲も作っています。
3.Fl / Cl / Pf サン=サーンス「タランテラ」
1835年から1921年のフランスの作曲者、カミーユ・サン=サーンスのA-moll(イ短調)の曲。
小品で、演奏時間が6分ちょっとの短い曲です。ピアノの淡々とした伴奏のもと、フルートとクラリネットが踊ったり歌ったりします。スピードアップしてくると熱くなります。
楽譜はIMSLPで入手できます。
IMSLP / Tarantelle, Op.6
4.Ob / Fg / Pf プーランク「オーボエ、バソン、ピアノのための三重奏曲」
1899年から1963年のフランスの作曲者、フランシス・プーランクの曲。
3楽章構成で、演奏時間が12分程度です。プーランクらしいコミカルなメロディーやメランコリックな美しい旋律が光る曲です。
I. Presto | コミカルでリズミカルな楽章です。 |
II. Andante | メランコリックなメロディーを歌います。 |
III. Rondo | 軽やかなダンスのようなメロディーです。 |
日本では著作権の保護期間が過ぎましたので、楽譜をIMSLPで入手できます。
IMSLP / Trio for Oboe, Bassoon and Piano, FP 43
四重奏(木管三重奏とピアノ)
5.Fl / Ob / Cl / Pf サン=サーンス「デンマークとロシアの歌による奇想曲」
サン=サーンスの曲。単一楽章で10分少しです。
デンマークとロシアの歌のモチーフが使われているようで、ところどころソロがあります。
楽譜はIMSLPで入手できます。
IMSLP / aprice sur des airs Danois et Russes, Op.79
6.Fl / Ob / Cl / Pf ミヨー「フルート、オーボエ、クラリネットとピアノのためのソナタ」
1892年から1974年のフランスの作曲家、ダリウス・ミヨーの曲です。ミヨーは木管五重奏曲「ルネ王の暖炉」(youtube)等で木管アンサンブルでは有名な作曲家です。
4楽章構成で、演奏時間は18分程度です。フランス新古典主義「フランス6人組」の一員らしい軽快かつ近代的な音運びになっています。
I. Tranquille | 意味は「静か」ですが、アンニュイさも含まれる印象です。 |
II. Joyeux | 意味は「楽しい・ウキウキ」で、細かい音が活発です。 |
III. Emporte | 意味は「激しく・激烈」で、かなり高い音が出てきてII.より激しいです。 |
IV. Douloureux | 意味は「切ない・痛ましい」で、I.より音の動きが少ないように感じます。 |
フランスの新古典主義の流れをくんだ1928年から2013年のフランスの作曲家、ジャン=ミシェル・ダマーズもこの編成の四重奏曲(youtube)を残しています。
五重奏(木管四重奏とピアノ)
7.Ob / Cl / Hr / Fg / Pf モーツァルト「五重奏曲」
1756年から1791年のオーストリアの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのEs-dur(変ホ長調)の曲。
3楽章で演奏時間は25分近くあります。ピアノと木管楽器のアンサンブルの草分け的存在です。ピアノと管楽器の役割が比較的メロディーと伴奏に分かれており、さながら小さなピアノ協奏曲です。
I. Largo – Allegro moderato | ピアノ、管、ピアノ、合奏のように交互に演奏します。 |
II. Larghetto | ゆったりした音楽で管とピアノがかけあいます。 |
III. Allegretto | 楽譜上カデンツァもあり、協奏曲みたいな印象をうける楽章です。 |
楽譜はIMSLPで入手できます。
IMSLP / Quintet in E-flat major, K.452
ちなみに、私は古楽器編成のほうが好きです。
8.Ob / Cl / Hr / Fg / Pf ベートーヴェン「五重奏曲」
1770年から1827年のドイツの作曲家、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのEs-dur(変ホ長調)の曲。
3楽章構成で演奏には26分ほどかかります。モーツァルトの五重奏に触発されて作ったと言われており、調性や楽器の構成、楽章数や演奏時間もほぼ同じです。
I. Grave – Allegro ma non troppo | モーツァルトと比較すると、管とピアノがより一緒に演奏している感じがあります。 |
II. Andante cantabile | 優しい雰囲気で始まり、管楽器がソロを豊かに歌います。 |
III. Rondo: Allegro ma non troppo | 舞曲調のリズムですが、曲の構成が緻密です。 |
楽譜はIMSLPで入手できます。
IMSLP / Quintet in E-flat major, Op.16
こちらも私的には古楽器編成のほうが好みです。
9.Fl / Cl / Fg / Hr / Pf リムスキー=コルサコフ「五重奏曲」
1844年から1908年のロシアの作曲家、ニコライ・リムスキー=コルサコフのB-dur(変ロ長調)の曲。
3楽章で演奏時間は30分近くありますが、軽快かつ民族的で楽しく聴きやすい曲です。
I. Allegro con brio | 軽快なメロディーが何度も出てくるので覚えやすく親しみやすい楽章です。 |
II. Andante | 管楽器のソロが光るゆっくりな楽章です。 |
III. Rondo. Allegretto | 熱い舞曲調で一番騎馬民族的な楽章です。 |
楽譜はIMSLPで入手できます。
IMSLP / Quintet in B-flat major
10.Fl / Ob / Cl / Fg / Pf カプレ「フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ピアノのための五重奏曲」
1878年から1925年のフランスの作曲者、アンドレ・カプレの曲。
4楽章構成で演奏時間は25分程度です。近代フランス作曲家のようなユニークな和音が少なく、ロマン派に近い分かりやすく聴きやすい曲です。
I. Allegro brillamente | 明るく華やかな楽章です。 |
II. Adagio | ゆっくりで管楽器のソロが印象的です。 |
III. Scherzo | コミカルで細かい音符が駆け上がります。 |
IV. Finale | 輝かしく疾走感のある楽章です。 |
あとがき
いかがでしたか?ここでは紹介しませんでしたが、木管楽器とピアノのアンサンブルは他にもダンツィの「木管楽器とピアノのための五重奏曲」などまだまだたくさんあります。時代が現在に近づくにつれ曲も増えているので、是非いろいろな曲を聴いてください!
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